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JA当麻の高品質な米づくりへの情熱

2019.10.07

No.19-031 / 2019年10月7日

JA当麻の高品質な米づくりへの情熱

― 行政と連携を図り精米HACCP認定工場で今摺米生産 ―

 北の大地「北海道」。広大な農地と漁場が育む豊かな農畜産物や魚介類から、食の宝庫と呼ばれる。今回、稲作が盛んな上川郡当麻町を訪れ、当麻農業協同組合(以下「JA当麻」)の農業の現況、取組みや精米工場について取材した。  

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当麻町の田園風景

【北海道中央に位置する当麻町】

 当麻町は、総面積204.95平方キロメートルで北海道のほぼ中央に位置している。北部から南東部にかけて山林地帯が総面積の65%を占めるが、その他は概ね平坦であり、当町の北に位置する比布町との境界を南北に石狩川が流れ、その支流に水田が広がっている。盆地特有の気候により寒暖の差が大きいことから、農作物の育成と食味には好条件であり、四季折々の表情は変化に富んでいる。

【当麻町の農業】

 当麻町の耕作面積は約4,000ヘクタールで、うち水稲作付けが約2,600ヘクタールと、耕作面積の約65%を占める基幹産業となっているが、減反政策による転作奨励制度により農業の複合経営がほぼ定着している。それを物語るように、キュウリ・ミニトマトをはじめとする野菜類、でんすけすいか・あづまメロンなどの果実、「大雪の花」というブランド名を冠した輪菊・カーネーション・バラなどの作付けが盛んである。特に、でんすけすいかは高い糖度と贈答品としてのブランド名が全国に広く知られており、2006年に第35回日本農業大賞を受賞。今年の初出荷では旭川市場で75万円の初競り最高価格で競り落とされた。

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特産のでんすけすいか

【JA当麻の現況と取組み】

 JA当麻は1948年に発足した単協で、2018年度の組員数(正・准合計)は1,405人。JA数が108と全国一の北海道であるが、JA当麻は決して大きなJAではない。しかし、同JAには勲章とも呼べる輝かしい実績がある。1999年から実施された市町村別のガイドライン配分ランキング(お米ランキング)で、道内唯一12年連続で最高位のランキングを獲得したのだ。ランキングは2010年に終了したので、12年間、常に最高位を保持していたことになる。他のJAにはない快挙であり、近年の北海道産米の食味向上も、同JAが貢献していることは想像に難くない。

 JA当麻がなぜ最高位を保持できたのか。同JAの福井幸司代表理事組合長(62歳)にその理由を尋ねると、明るくはっきりとした口調で「1997年にカントリーエレベーター(CE:サタケ施工)が竣工したことを機に美味しい米を作ろうと考え、各農家に籾乾燥機の放棄と全量生籾集荷を要請しました。全戸がすぐに承諾したわけではありませんが、年々賛同者が増え、現在は目的を達成しています」と語る。全量生籾集荷にこだわった理由は、米の品質向上と均一化を図ると共に、今摺米として消費者に美味しい米を提供するという戦略があったからだ。

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福井幸司 代表理事組合長

 今摺米とは、籾の状態で低温貯蔵し、受注後に籾摺り・精米して出荷する米のことである。籾の低温貯蔵により米を生理的に休眠状態にして食味を保ち、さらに受注時に籾摺り・精米することで、より新鮮で食味の良い米を消費者に届けることができる。これをJA当麻が一丸となって行えば、当麻産米の価値向上につながる。この真摯で辛抱強い取り組みが、12年連続最高位に結実したと言っても過言ではないだろう。

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カントリーエレベーター

 特筆すべき点は他にもある。いかにJA当麻が熱心に取り組んでも、農家の協力がなければすべてが画餅に終わる。これについて組合長は「まずは生産組織(農家など)とJAの意思疎通がうまくいっています。われわれには必ず農家のためになるという信念があり、売れる米、美味しい米を作ろうという意志、量より質が大切であるという思いを持っています。その『気』が農家にも伝わっているのだろうと思います」と熱く語る。良質米づくりの施策はCEの活用と今摺米だけではない。各農家が、窒素施肥を減らしタンパク含有量を低減させたり、田んぼの水はけを良くしたりと栽培にも気を配っている。「施設園芸については、育苗はJAがやる。当然集荷・販売もJAが担う。農家には栽培に専念してもらいたい」と、組合長はJAの積極的関与と農家の高齢化を考慮した施策の重要性を述べた。

 栽培品種は、以前は「ほしのゆめ」が多かったが、現在は病気に強く、農薬を節減しながらも安定的な生産が期待できる「きたくりん」に軸足を置いている。価格競争のテーブルにつかない戦略を取り、12年連続最高位の実績もあり「きたくりん」で勝負に出たという。関東地区では積極的に当麻米を取り扱っている量販店もあり、品質の良さが認知されている証左である。また、「きたくりん」の栽培技術とJA当麻独自の保有技術を農家に提供し、生産者とJAが一体となって良質米づくりに取り組んでいる。これらの情報は要請があれば他のJAにも提供しているというから懐が深い。JA当麻は、北海道での今摺米の先駆者でもあり、進取の精神と矜持を見る思いがした。

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今摺米きたくりん

 情報開示という点では、同JAの決算内容をホームページで公開しているのも見逃せない。「ミニディスクロージャ―」という表題で掲載しているのだが、簡潔で理解しやすい内容となっている。一般に決算書は分かりにくいが、同JAの組合員との意思疎通を大切にしている気持ちが、このような形でも現れているのだろう。

【精米HACCP認定の精米工場】

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精米工場外観(奥に見えるのがCE)

 JA当麻は、長らくCE内の精米設備で精米していたが、衛生面での区画分けが難しく、製品中の異物や虫の混入の恐れが常にあった。そこで2008年頃から精米工場建設の検討を開始し、幾度となく仕様や設計を見直す中で、当麻町の補助採択が決定したため、建設を決断した。「精米工場を建設しようとした理由は、白米を食品として見ているからです。食品であれば衛生面、安全性を重視しなければなりません。さらに『見せる工場』にしたかったのです」と組合長は建設当時の思いを語る。精米工場はCEに隣接される形で、2016年に竣工した。  

精米工場には以下の3つコンセプトがある。


① 「見える化・攻める販売戦略と発信」

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精米工場の「見える化」を実現


 ・工場内をガラス張りにすることで製造工程を見える化
 ・衛生的な工場設計にすることで工場勤務の職員の意識向上
 ・工場内と区画された見学者通路によりいつでも視察受入れが可能
 ・積極的な視察の受入れにより産地精米の安心と衛生管理工場による安全からなる「北海道当麻産米」の発信力の拡大

② 「おいしさへのこだわり」

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摩擦3段式ミルコンボを採用


 ・新精米方式(ミルコンボ:サタケ製)の採用。低圧粒々摩擦による3段階精米により低い圧力を加えながら米表面の糠層だけをやさしく削りとるため、砕米発生が少なく経時変化での劣化が少ない美味しい長持ちの新精米方式

③ 「産地の安全・安心・信頼のブランドを守る」

 ・食味を最優先にする考えの中で米を籾の状態で超低温保存(0~5℃)し、出荷直前に米の殻を取り除き(籾摺りし)、CEに隣接した精米工場で精米することで年間を通して新鮮で新米に近いお米が提供できる

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 この3つのコンセプトを掲げ、CEと精米工場が直結したメリットを最大限に活かしている。さらに、2018年9月5日、JA単協としては全国初の「精米HACCP認定工場」に認定された。認定後は安全管理の徹底化が図られただけでなく、精米工場の視察も増え「見える化」を象徴している。また、「おいしさへのこだわり」に関しては、ミルコンボと以前の精米施設で使用されていたミルモア(サタケ製)との炊飯比較テスト(官能試験)を実施し、試食した全員がミルコンボのご飯を高く評価した。両者には歴然とした差があったという。

【行政とJAとの連携】

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JA当麻本部事務所

 将来的には、CEの籾を全量白米(約5万俵)にして販売することを目標としており、さらに海外への輸出も視野に入れている。「お米の消費が今以上に伸びることはないと思うが、当JAでは生産数量目標を掲げ、海外への輸出も検討しながら白米の底辺を広げたい。単協として先進的な取り組みを行っていきたい」と組合長は語る。その口調からはJA当麻の農業に対する愛情と情熱が痛いほど感じられる。組合長は「町長と組合長が農業担当です」と笑顔で語るが、これは行政とJAが一体となって推進しているということを意味する。それを如実に表すように、JA当麻本部事務所の2階には、当麻町役場の農業振興課・林業活性課、土地改良区、森林組合が同一フロアに会し「当麻町農林業合同事務所」を開設している。JA当麻が単協としての実績と存在感を示している要因の一つに、この緊密な連携が挙げられるだろう。「決断・決済が速い」という組合長の言葉が象徴的である。行政がからむ課題の解決・対応には時間が掛かるケースが往々にしてあるが、農業の現場を知るJA当麻と行政が物理的、精神的に緊密なことが素早い対応につながっており、それは農家・町民への利益に直結している。

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JA当麻の組合長(中央)と幹部

 このような連携や、JA当麻が単協でありながら先進的な取り組みができる原動力はどこにあるのだろうか。福井組合長はその理由を「見えない『気』が重要」と表現した。人は見えるもの、触れられるものに注力しがちだが、見えない「気」こそ見逃してはならないのだという。「天気、気合、気分、本気など、どれも『気』が付いている。見えないけれど重要だと思います」と、組合長はその大切さを説く。取材中、組合長の常に笑顔を絶やさず、周りに気配りをしながらも熱く語る姿に、いつの間にか魅了された。同席した幹部の方々も皆明るく前向きであった。このような姿勢で日々の業務に精力的に取り組む姿に、JA当麻の強さと柔軟性の高さを垣間見たような気がした。日本農業の衰退が叫ばれて久しいが、JA当麻が一つの道筋を示しているのではないだろうか。

以上

別紙

1.JA当麻の概要


名  称 : 当麻農業協同組合(JA当麻)
代表者:代表理事組合長 福井幸司
所在地:北海道上川郡当麻町4条東3丁目4番63号
設  立:1948年4月
主な事業:信用、共済、販売、購買、営農指導、その他施設業務

2.精米工場の概要


事業名:平成28年度 精米施設新設事業 当麻農業協同組合 精米設備新設工事
施主:当麻農業協同組合(JA当麻)
施工:株式会社サタケ
生産能力:3,200トン/年
設備機器:精米機(摩擦三段式)、フルカラー光選別機、小型無洗米加工設備、小口精米ユニット、全自動包装機、フレコン計量機、金属検出機、ロボットパレタイザー等

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小型無洗米加工設備(左)、小口精米ユニット(右)

以上

(本リリースへのお問い合わせ: TEL 082-420-8501 広報部)
※ニュースリリースの内容は発表時のものであり、最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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