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JAふくしま未来の新カントリーエレベーター

2019.01.16

No.19-001 / 2019年1月16日

JAふくしま未来の新カントリーエレベーター

― 震災を乗り越え農業の再生と振興事業に取り組む ―

 今でも震災の爪痕が残る福島県。津波と原発事故で大きな被害を受けた浜通りで、災害復興と地域農業の振興に懸命に取り組むJAふくしま未来。今回、同JAのそうま地区(福島県南相馬市)を訪れ、農業の現況と課題などを取材した。

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新原町CEの全景

 

【JAふくしま未来】
 「福島県」。この県名に多くの日本人が心を揺さぶられ、深く思いをはせる。東日本大震災の津波と原発事故で失われたものは余りにも大きい。今でも災害の爪痕が散見され被害の深刻さを物語る。その福島県の北東部に位置するJAふくしま未来(所在地:福島県福島市北矢野目字原田東1-1、代表理事組合長:菅野孝志)は、2016年3月1日、新ふくしま、伊達みらい、みちのく安達、そうまの4JAが合併し発足した。組合員数は約95,000人で全国6番目の売上規模を誇るJAである。今回、浜通り(県東部の海岸地方の呼び名)にある、同JAのそうま地区(所在地:福島県南相馬市鹿島区横手字川原185-1、常務理事:星 保武)を訪れた。津波で多くの家屋、田畑、道路、施設などが大きな被害をこうむった地区である。

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星 保武常務理事

 

【そうま地区と農業】
 JAふくしま未来のそうま地区がある南相馬市は、2006年1月1日、原町市と相馬郡小高町および鹿島町が合併して誕生した。国の重要無形民俗文化財に指定されている相馬野馬追が行われることでも有名である。「夏はカラッとして湿度が低く、冬は温暖な気候で生活しやすい。人柄は温和な感じだな」と語るのは、そうま地区担当常務理事の星 保武氏(70)である。星氏は「この地区の農業はコメが中心だが、約12,000haあった農地が津波と原発事故で8,000ha程度に減少している」と、コメ作りが元に戻らない状況に心を痛める。本格的にコメ作りを再開できたのも震災から5年経った2016年であった。2018年のコメ生産量は7,982トン(主食2,113トン、飼料米5,869トン)で、品種はコシヒカリ50%、天のつぶ40%、その他(ひとめぼれなど)が10%となっている。

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【新しいカントリーの建設】
 農家の高齢化は日本農業の懸案だが、そうま地区も例外ではない。ほとんどが兼業農家で、65歳以上が60%を占め、中山間地では跡継ぎがいない問題に直面している。この高齢化、後継者不足問題はカントリーエレベーター(以下「CE」)の運営にも影響を与えている。そうま地区管内には4基のCEがあるが、いずれも集荷量が処理能力をオーバーする事態が生じたのだ。中には稼働率が150%に達する施設もあったという。震災により5基のうち1基が使用できなくなったこともあるが、高齢化により乾燥調製作業をCEに任せる農家が増加し、集荷量が増えたのである。
 JAとしてCEの利用率の向上は歓迎であるが、処理できないとなれば存在意義が問われる。CEに従事するオペレーターの負担は増したが、農家(組合員)のために懸命に対応し切り抜けてきた。星氏は現場の尽力に感謝しながらも「農業を守るためには新しいCEが必要であった」と語る。それはJAのみならず、南相馬市の重要課題である農業の再生や振興事業への取り組みの考えに合致する。果たして、新CE(「新原町CE」)の建設が南相馬市の震災復興事業として国から認められ、2018年1月に安全祈願祭、同年11月5日、検査引き渡しが行われた。施工はサタケ(本社:広島県東広島市西条西本町2-30、代表:佐竹利子)が行い、南相馬市からJAふくしま未来に賃貸契約という形で施設を提供している。

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【未来への思い】
 新原町CEは2019年に本稼働の予定である(鉄骨2階建て、延べ床面積1239.59m2、籾乾燥機300トン×8基、水稲玄米:約1,850トン処理、大豆:約280トン処理)。これにより、処理能力オーバーを回避できるのは農家、JA双方にとって大きなメリットとなる。しかし、星氏はCEの新設に安堵の表情を浮かべながらも「CEが多忙になるのは一時的なものであり、年間を通じての人員確保は固定費の増大につながる。また、技術力の優劣は、製品品質や作業効率に影響を与える」と、オペレーターの人員確保と技術力の継承に問題を提起している。それは氏の現状に満足せず、常により良くしたいという思いや危機感の表れであり、農家・農業に対する愛情とも言えよう。
 一般にCEにおける維持・管理費と利用料金の収支バランスには苦慮するところである。そうま地区でも例外ではない。星氏は「コメを主体とする農家のため利用料を安くしたいが、さまざまな効率化とコスト削減をしなければならない」と語る。トラブルが少なく、誰でも操作ができるシステムをメーカーに望むのも、その考えが根幹にあるからだ。サタケはメーカーとしてより良い製品・システムを提供する責務があるが、技術力や現場対応力をクライアントの実情に合わせて提供することの意義を認識している。この取組み事例として、そうま地区で収穫シーズン中に、サタケがCEのオペレーター業務の一部支援を行った。サタケの経験と技術の提供により、CEの運営支援とオペレーターの技術力向上を期した。一朝一夕で課題が解決するわけではないが「JAとメーカーが協調し、日本農業の維持・継続を図らねば共倒れになる。国も農業を生かす政策を実行して欲しい」という星氏の言葉は強く心に響く。
 「JAふくしま未来」。まさに、未曽有の震災から立ち上がり、未来に向かって歩む姿を思い起こさせる。福島県のホームページにも「ふくしまからはじめよう。Future From Fukushima.」と書かれている。それは未来への挑戦であり、ゆっくりでも確実に復興していく福島を象徴している。新原町CEの取材において、南相馬市とJAふくしま未来の思いを星氏の言葉から強く感じ取った。

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以上

■JAふくしま未来の概要
 1.名称  :ふくしま未来農業協同組合(JAふくしま未来)
 2.代表者 :代表理事組合長 菅野孝志
 3.所在地 :福島県福島市北矢野目字原田東1-1
 4.設立  :2016年3月1日
 5.主な事業:営農指導事業、販売事業、購買事業、信用事業、共済事業

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新原町CEの内部

 

(本リリースへのお問い合わせ: TEL 082-420-8501 広報室)
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