製品・技術
2022.08.22
No.22-026 / 2022年8月22日
技術本部副本部長インタビュー(1)
― 新型無洗米製造装置の洗米技術について語る ―
サタケ(本社:広島県東広島市西条西本町2-30、代表取締役社長:松本和久)は、4月25日に新型無洗米製造装置「MPRP36A」を発売しましたが、新しい洗米方式の開発経緯や効果などについて、水野英則技術本部副本部長に聞きました。
― MPRP開発の意図、背景は?
開発の背景としては、2000年に無洗米製造装置「NTWP(ネオテイスティ・ホワイトプロセス)」が発売されて以降、精米工場や中食・外食を取り巻く環境が変化したことです。SDGsに代表される「環境に優しい」「脱炭素社会」などが広く社会に認識され、また、よりおいしい無洗米や事業者の利益につながる製品の開発を求める声も高くなってきました。そのため、あらゆる点でNTWPを超える新型無洗米製造装置の開発が喫緊の課題となりました。
― 再び水洗い方式に回帰した理由は?
MPRPの開発にあたってはゼロベースで検討し、さまざまなトライアルやシミュレーション実験を経て「水で洗う(とぐ)」ことが洗米の原点であり、おいしいご飯の基本であるという結論に至りました。2020年1月に開発がスタートしましたが、技術課題は従来の水洗い方式とは異なる新たな洗米方式の確立であり、完成に至るまで最も多くの時間を費やしました。
― MPRPとNTWPの最大の違いは?
白米の糊粉層除去にMPRPは水を、NTWPはタピオカやライスビーズなどの熱付着材を使うという点が異なりますが、開発の意図という点では使用エネルギ量が大きく違います。タピオカやライスビーズは、その製造段階や無洗米加工後の乾燥工程で一定のエネルギを必要とします。一方、水は基本的に取水後そのまま使用するため、特段のエネルギを必要とせず省エネだけでなく、装置のコンパクト化やコスト低減にもつながります。
― 新しい洗米方式とは具体的にどのようなものか?
MPRPで取り入れた新技術は2つあります。1つは「ウルトラマイクロバブル水(UMB水)」を使ったこと、もう1つは洗米・脱水工程を2か所に設けた「マルチパス方式」を採用したことです。UMB水は直径1μm未満の超微小気泡を有する水で、100mLあたり約5,000万個の気泡を含んでいます。マルチパス方式は洗米・脱水工程を2か所に設けた(分散した)方式です。
― 新しい洗米方式はどんな作用があるか?
UMB水を使うことで、これまでの無洗米に比べ微小な顆粒(糊粉層)を吸着・除去します。顕微鏡写真を見るとその差は明らかです。マルチパス方式は2回に分けて洗米・脱水しているので、従来の1回洗いと違い、優しく洗うことができコメの表面を荒らさない(傷つけない)メリットがあります。また、UMB水を10%添加し、それを2回使用することでほぼ20%の添加量に相当する洗米が可能です。さらに、新しいUMB水は2回目の洗米時に添加しており、高い洗浄効果(仕上げ水洗浄)を発揮します。
従来製法無洗米表面MPRP無洗米表面 |
― 無洗米にどのような効果が見込めるか?
2つの新技術により、コメの表面を荒らすことなく糊粉層が十分除去できるので、従来機と比べコメの白度を抑えつつ低濁度の無洗米が製造できます。これにより、歩留りの向上や炊飯時のご飯の食味が向上しました(当社従来機比較)。
― 開発段階で苦労したことは?
コンパクト化やコストダウンを考慮し、2か所の洗米・脱水部を並列(二軸)ではなく一軸上で構成したため、目標の無洗米品質を確保できる各パーツの最適な形状や寸法を決定することが大きな課題でした。そこでシミュレーション実験を行い最適化を行うことで、設計品質の向上と開発時間の短縮を行いました。
― 今後さらに取組みたいことは?
現在は加水量を10%としていますが、できるだけ減らしたいと考えています。加水量を少なくすることで、とぎ汁を液体飼料として活用する際に固形物含有量が増え、飼料としての価値も高まります。また、UMB水をMPRPに初めて採用しましたが、他の機械にも活用展開できないかと考えています。
【水野英則(みずのひでのり)プロフィール】
1985年株式会社佐竹製作所(現サタケ)に入社。技術部生産技術課、プラント機械課、精米プラントグループ、技術企画室などを経て、現在常務執行役員技術本部副本部長。
以上
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