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2020.11.16
No.20-019 / 2020年11月16日
無洗米の副産物を畜産に活用
― 環境保全型農業を推進するJA全農ひろしま ―
畜産業で生まれた堆肥を、農作物や飼料用作物を栽培するために「再利用(RECYCLING)」する、「資源(RESOURCE)循環型農業」。この活動を「繰り返す(REPEAT)」ことで、地域の環境保全につなげる<3-R>に取り組んでいる全国農業協同組合連合会広島県本部(JA全農ひろしま)。精米製品の製造を受け持つパールライス工場ではさらに、無洗米製造装置から出る排水を液体飼料として活用することにも取り組んでいる。同装置を含む新精米ラインを導入した経緯や環境への取り組みなどについて取材した。
米が主体の広島県農業。農地の半数以上は稲作がおこなわれている。沿岸部から山間部まで500m以上の標高差を活かし、「適地適作」で気候条件や環境に合わせバリエーション豊かな米が生産されている。消費県でもある広島県では、生産される米のほとんどは県内で消費されている。
この広島県で、JAグループの一員として生産者と消費者を結ぶ懸け橋となるべく、県産米を中心として精米加工から販売までの米穀事業を担うのがJA全農ひろしま米穀部であり、米穀事業の核となる施設がパールライス工場だ。取り扱う米の7割以上が県産米、そのうち4割がコシヒカリで、次いであきさかり、恋の予感といった品種が続く。
同工場では4年前から、新精米ラインの構築と旧ラインからの集約を進めてきた。1979年から稼働してきた旧ラインは単一銘柄を大量生産するのに適した施設であり、設備の抜本的な更新によって時代のニーズに即した多品種少量生産に対応するとともに、より安全安心で生産性の高い工場の構築を目指す、というのがその目的だ。
新精米ラインは、旧ラインを稼働させながら敷地内の空きスペースに建設された。建築面積は旧ラインの1/3以下、延べ床面積についても1/2程度に収めるべく、立体的配置で効率の高い工場を目指し、設計・施工された。
2017年4月、処理量毎時2.5トンのサタケ精米選別ユニット「ソフィア」(RMU025A) 2基を核とした精米ラインが完成し稼働を開始した。2018年3月には新旧両ラインを対象に精米HACCP認定を取得し、徹底した品質管理による安全安心な米を供給する体制が整った。
一方、旧工場で稼働していた無洗米製造装置(NTWP50B・処理能力毎時5トン)については、2001年設置と古くランニングコストがかかっていたこともあり、入れ替えを検討していた。ちょうどそのころ、サタケが新しい水洗い方式・スーパージフライス(SJR36A・処理能力毎時3.6トン)無洗米製造装置を開発したと聞き、パールライス工場の関係者はすぐさま、同機が導入されている工場へ視察に訪れた。
「旧ラインは大ロット対応精米機からの接続だったため処理能力毎時5トンの無洗米製造装置でした。新ラインは小ロット対応精米機なので、それに合わせる形で処理能力毎時3.6トンの無洗米製造装置に決めました」と、採用にいたった理由について話すのは米穀部部長・池田道晴氏。米穀販売課課長・山口雅史氏は「機械がコンパクトであり、製造した無洗米は濁度が低く、官能検査においても良いと感じました」と述懐する。品質管理室室長・坂井秀太郎氏は「SJR36Aで製造された無洗米は、ご飯を炊いたときの粒感が良い。また乾燥部の熱源は使用時のみ稼働する電気ヒーターのため、無駄がなく省エネになります。メンテナンスする箇所も集約されるので、作業性が向上しました」と、同機のメリットを挙げた。
さまざまな角度から検討し、導入を決めた無洗米製造装置SJR36A。米に対し重量比10%と、洗米水量をSJR従来機に比べ2/3に削減した同機は、それに伴い排水量も削減されるが、その排水をリキッドフィードとして豚に給餌できるというのが特長の一つだ。従来は浄化装置を介して処理するかヒーターで水分を除去して処理するのが一般的であったが、リキッドフィードとして再利用することは環境にやさしく、資源の有効利用となる。SDGsの考え方も含め、環境保全・省エネルギーを念頭に置いてサタケが開発した製品の一つだ。
同工場においても排水の全量をリキッドフィードとして、県内の養豚業者に引き取ってもらっている。「もともとエコフィード(食品残さ等を利用して製造された飼料)を導入されており、受け入れはスムーズでした」と話す山口氏。パールライス工場工場長・太田哲也氏が「養豚業者さんに聞くと、もともと飼料を準備する段階で大量の水を使用しているとのこと。なおかつ栄養分が多い液体飼料なら、いくら持ってきてもらっても良いと言ってもらっています」と言うように、お互いがウィンウィンの関係となっている。
また前述のとおり、JA全農ひろしまでは耕畜連携による資源循環型農法で生産された商品ブランド「3-R」を推進している。米についていえば、広島県内で製造された家畜ふん堆肥の施肥もしくはそれを原料とした肥料の使用や、環境保全米栽培基準(節減対象農薬・化学合成肥料:従来比2割以上減)を満たすことが要件だ。「3-R」ブランド商品以外にも、環境保全米・特栽米等こだわって米づくりをする農家を支援するため、地域オリジナル商品などの取り組みを行っている。山口氏は「SJRのリキッドフィードも環境に配慮した取り組みの一環であると考えています。これからもSDGsや持続可能な農業を目指し、時代に合った精米工場にしていきたい」と話す。
今後については池田氏は「我々は、農家の皆様がこだわって作られている米の美味しさを実需者へ届けたいと考えています。また、必要とされる工場であるべく、ISO、精米HACCP認定を取得してきました。将来的には食品工場並みにまで安全・安心の精度を高めていきたい。そしてJAグループならではの特色を活かし、農家の皆様にもメリットを還元できる工場にしていきたいと思います」と抱負を語った。
以上
■新精米ライン概要
所在地 :広島県東広島市西条吉行東2丁目3-41
構造 :鉄骨造2階建て
規模 :建築面積 855.53m2、延べ面積 1,586.61m2
精米本機 :精米選別ユニット「ソフィア」(RMU025A)
毎時処理能力2.5t×2系列
無洗米製造装置 :スーパージフライス(SJR36A) 毎時処理能力3.6t
タンク設備 :玄米タンク 6t×10本、精米タンク 6t×4本、
計量タンク 3t×8本
精米精選設備 :糠玉・砕粒選別機「クワッドセパレータ」、
光選別機「ピカ選GRAND」ほか
計量包装・出荷設備:自動計量包装機、金属検出機、ウェイトチェッカ、
ロボットパレタイザほか
以上
(本リリースへのお問い合わせ: TEL 082-420-8501 広報部)
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