経営関連
2015.01.28
2015年1月28日
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広島県初の集落ぐるみ型農事組合法人である「重兼農場」が設立25周年を迎えた。米をはじめ育苗、酒米・ブドウの生産など、事業の多角化を図るとともに、近隣法人との連携による広域での農業機械共同利用を推進してきた。集落営農の先駆者として、新たな時代の営農モルづくりに奔走する、重兼農場の取り組みについて取材をした。
広島県内随一の米どころである東広島市。同市東部に、今年で設立25周年を迎えた農事組合法人がある。本山博文氏(75歳)が代表理事を務める農事組合法人重兼農場だ。重兼農場のある東広島市高屋町重兼地区は、JR白市駅まで徒歩約15分、山陽自動車道高屋インターチェンジまで車で約5分と交通至便な環境にあり、工業団地等も整備されていることから就業機会に恵まれ、零細な兼業農家の多い地区だ。それだけに法人設立前は、小区画棚田での低効率性、機械の過剰投資、高齢化・後継者不在など多くの問題を抱えていた。
地域住民がこれらの課題解決のために立ち上がり、検討を尽くして圃場整備に着手したのは昭和62年のこと。さらには、将来の営農体制を見据えて農業機械の共同利用組織を設立した。そんな矢先に広島県より「1集落1農場」モデル地区として法人設立の打診を受け、平成2年1月、「集落ぐるみ型」として広島県初となる農事組合法人設立に至った。
改めてこの25年を振り返り、本山氏は「やっていなかったら耕作放棄地が増え、多くの農家は潰れていただろう」と、法人設立の意義を強調する。平成21年まで広島県集落法人連絡協議会会長を務め、県内の集落についてつぶさに見てきた経験の上から、法人化に成功した地区の農地は守られているが、そうでない所の耕作放棄地が増加しているという現状を痛切に実感している。
ただ、重兼農場25年の歩みは順風満帆というわけにはいかなかった。米を主体とした営農の効率化によって生じる余剰労働力で、野菜の栽培など経営の多角化を図るという当初の構想に沿って、圃場整備で集まった畑地でホウレンソウやアスパラガスの栽培に挑戦したが、災害や相場の乱高下に遭い断念せざるを得なくなった。
続いて取り組んだのが種籾の生産だ。栽培や調製作業に手間は掛かるが、相応の利益は得られたためしばらくは栽培を続けたが、稲こうじ病の蔓延によってこれも断念した。そして今度はJAの下請けとして育苗事業を始めたが、これが順調に軌道に乗り、今では米生産に匹敵するほどの収益を生み出す経営の大きな柱となっている。また近年は酒米(山田錦)の生産にも乗り出し、昨年から本格的な出荷が始まった。
「やはり水稲だけでは、安定した経営は難しい」。本山氏はこれまでの経験を糧に、新たな事業の展開を常に模索している。そのためにも、新たな事業に投資する資金が必要になる。「法人で得た利益を組合員に全て配分するという考え方もあるが、今後の事業展開を考えたとき、内部留保があるところが生き残る」と力説する本山氏。組合員の中には金融機関OBもおり、税金を払ってでも内部留保を確保すべきとのアドバイスに従って経営を進めてきた。
そんな重兼農場に、若い就農希望者がやってきた。神戸から結婚を機に移り住んできた教蓮健治氏(31歳)だが、農業の経験は全く無いのだという。しかしその眼差しに「本気なのが伝わった」という本山氏ら組合員一同は、教蓮氏を受け入れることにした。「来てもらうからには、やりがい、夢を実現してもらいたい。将来中心になって活躍してもらいたい」という、本山氏をはじめ周囲の期待を背負った教蓮氏が取り組む作目は「ブドウ」だ。
周囲の手を借りながら、独学で学んだことを自分なりにアレンジして28aの畑にブドウを植え付け、昨年初めての収穫を迎えた。「初収穫を自分自身がワクワクして待ち望んでいた。『美味しかったよ』という言葉をいただいてとてもやりがいを感じた」と、教蓮氏は喜びを語る。初年度は結実数を抑えたが、今年からは徐々に増やしていく計画だ。ゆくゆくは観光農園として、消費者に直接食べてもらいたいと意気込んでいる。
このような農業未経験の若者が思い切って挑戦し、安心して農業に従事できるのも、重兼農場という屋台骨のしっかりした法人経営があり、農地や人、資金があってこそだ。「重兼農場です、といえば店舗でも快く扱ってくれる」と教蓮氏が言うように、販売面においても重兼農場ブランドが後押しをしている。長年築き上げてきたブランドへの信頼は大きい。
将来の経営環境を見据えて本山氏が取り組みを開始したのは、近隣の農業法人と連携した広域での農業機械共同利用だ。平成21年、重兼農場を含めた東広島市内の5つの農事組合法人が集まって「ファームサポート東広島」を設立し、農業機械の共同利用事業を開始した。重複する農業機械を削減し、コストを削減することが目的だ。
設立に先立って調査したところ、東広島市内にある9法人の所有する田植機は合計15台だったが、稼働実績は最も多い日でも8台であった。つまり7台は削減が可能であり、作業日を調整すればさらなる作業の平準化も見えてきた。この法人間連携は所有機械の削減にとどまらず、故障時にもすぐに予備機を充当できることや、稲発酵粗飼料用コンバイン・ブームスプレーヤーなど単独では償却の難しい機械の導入ができること、稼働率向上で償却期間が短縮でき機械の更新時期を早めることができることなど、多くのメリットを生み出すことが分かった。
しかし本山氏の構想はこれにとどまるものではない。「広島県の農地全体を見ると、標高差が約700メートル、作業時期には1か月以上の開きがある。機械を移動させていけばさらなる機械の協同利用が可能」と話すように、広島県というより大きなエリアでの法人間機械協同利用を視野に入れている。東広島での事例はそこに向けた大いなる一歩だと言えよう。
重兼農場では、都市住民向けに市民農園の運営も行っている。かつてホウレンソウ・アスパラの生産をしていた畑の跡地利用策として始めたものだが、農園の利用者が米を購入し、さらに口コミで購入者が広がるなど、直売ルートの販路拡大に一役買っている。昨年からエコファーマーの認定を受け、食味試験の結果「80点以上の米しか販売しない」という品質へのこだわりなどもあって、「安心」「美味しい」と人気はますます高まっている。今後は米、ブドウともに直売を増やしていく方針だ。
また昨年、宮中祭祀である新嘗祭で使用される米を献呈する機会に恵まれた。10月には本山氏が天皇皇后両陛下にお目見えし、本山氏は「法人設立25周年の良い記念になった」と喜びを語る。新嘗祭は宮中でも最重要行事であると説明を受け、農業者として誇りを感じるとともに、集落営農の先駆者として地域農業の発展のため、新たな営農モデルづくりに奔走する決意だ。
以上
所在地東広島市高屋町兼396-1
設立年月日平成2年1月8日
組合員数30名
理事10名
資本金999万円
農地集積面積33ha(うち組合員農地17ha)
農地利用主食水稲16.3ha、酒米4.4ha、小麦5.3ha、大豆2.7ha、
ブドウ0.28ha
水稲苗育苗25,000枚
労働力定年帰農者6名(60歳代)、職員1名(30歳代)、育苗時の臨時雇用
組織東広島市内の5つの集落法人で構成(任意組合)
設立年月平成21年12月
組合長本山博文(農事組合法人重兼農場 代表理事)
出資金70万円
目的(1)連携によるさらなる低コスト化
(2)集落法人設立が困難な集落農地の受け皿となる
事業農業機械共同利用
・水稲:田植72ha、防除93ha、収穫84ha
・稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ):植付・収穫42ha
機械賃借:水稲用田植機、コンバインは構成法人から賃借
所有:稲発酵粗飼料用コンバイン、ラッピングマシン、
水稲用ブームスプレーヤー
以上
(本件へのお問い合わせ: TEL 082-420-8501 広報室)
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