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「真吟精米特集(2)」―新澤醸造店編

2022.11.10

No.22-029/ 2022年11月10日

「真吟精米特集(2)」―新澤醸造店編

― 道なき道を切り開き業界に一石を投じる ―

 サタケ(本社:広島県東広島市西条西本町2-30、代表取締役社長:松本和久)は、2018年、米の磨き方で日本酒の酒質が変わる業界最先端技術「真吟精米」を開発しました。このたび「真吟精米」を導入している日本各地の酒蔵を訪問し、日本酒造りに対する思いや取り組みについてご紹介します。第2回の訪問先は「究極の食中酒」を生み出した宮城県大崎市三本木の株式会社新澤醸造店(以下:新澤醸造店)です。

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蔵元 新澤 巖夫 氏

【東日本大震災で蔵が全壊】
 1873年の創業以来、宮城県大崎市三本木で日本酒造りに取り組んできた新澤醸造店(本社:宮城県大崎市三本木北町63)は、2011年3月の東日本大震災で蔵が全壊。しかし、同年11月には、山形県との県境に位置する柴田郡川崎町に蔵を移転し、すぐに酒造りを再開した。5代目蔵元の新澤巖夫氏(47歳)は、当時のことを「自分も被災した身だったので、移転の決断は判断力・体力共にとても大変でした。でも、震災直後に49の蔵元さんが手伝いに来てくださったんですよ。しかも、手弁当で。そのときに、お金じゃ買えないものが蔵にはたくさんある。酒造りができることは幸せなことなんだと改めて実感しました。すぐに移転先を探して、本社機能は大崎市に残したまま、酒蔵を移して川崎町で酒造りを始めました」と語る。

【従業員が自由に選択できる環境】
 現在、新澤醸造店は、40名強が酒造りに取り組んでおり、グループ会社には、東北初となるクラフトジン蒸留所の株式会社MCGや精米工場のライスコーポレーション株式会社が名を連ねる。労働形態は7時間で、有休取得率は約9割。職人の世界と思われがちな日本酒業界だが、同社では、約60%が女性従業員で働き方も自由。雇用形態(正社員・準社員)や勤務時間は、従業員自ら選択可能に。「うちは『本人が決める』という作業を多くしています。酒造りに限らず、人生の決定をより多くしている人間のほうが成長が早いんですよね。上司から言われたことを守るのは、決定でも何でもないからいつまで経っても成長しない。だから、うちは選択肢が自由にあるんです」(新澤氏)。また、同社では車を購入する際に、会社から1人当たり100万円ずつ支給されるのだが、購入方法は個人の自由である(ただしSDGsへの貢献としてハイブリッド車限定)。これは、選択するという経験を提供したいという新澤氏の願いが込められている。

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食中酒について語る新澤氏

【食中酒のパイオニア】
 25歳にして杜氏に就いた新澤氏は、食前酒・食後酒というカテゴリーしか存在しなかった当時、食事中に飲みたい酒と位置付けて、日本酒業界に「食中酒」という新たな選択肢を提唱。のちに、新澤醸造店の代表銘柄となる「伯楽星」を販売した。「実は、日本酒の香りって、苦味成分でできているんです。その苦味を隠すために甘く仕上げる。でも、そうすると今度はべたつくので、アルコールや酸を高くして後味のキレを出すと。これが一般的に売れるお酒です。ただ、この種のお酒は全部料理の邪魔をするんですよね。香りがあると風味を邪魔するし、甘くすると料理の味が濃くなる。だから、新澤醸造店は『目立たないけど、いつ飲んでも美味しいお酒』を目指すことにしました」と語る新澤氏は、食事を引き立たせるために、香りと甘み、酸を全て下げた日本酒の開発に着手。試行錯誤を重ねた結果、食中酒に辿り着き「究極の三杯目」「究極の食中酒」と題して、日本酒業界に一石を投じたのである。

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左の2機が真吟精米可能な精米機

【真吟精米との出会い】
 2008年にグループ会社の精米工場「ライスコーポレーション株式会社」を設立した新澤氏。震災後は2拠点で3台の精米機が稼働していたが、業務拡大と人件費や輸送費の無駄を省くべく、2018年に精米拠点を集約した新精米工場の建設に着手。2020年7月に真吟精米が可能な精米機を2台導入。現在は6台の精米機が稼働している。
 サタケの精米機採用のきっかけは、広島県の今田酒造本店の真吟酒との出会いだという。当時、醸造学会で真吟精米の存在を認識した新澤氏は、すでに真吟精米での醸造に取り組んでいた今田酒造本店の真吟酒「HENPEI」と従来の丸く米を削る球形精米の「富久長」を取り寄せた。米の形状(削り方)以外はすべて同じスペックの2つを飲み比べたところ、想像以上の違いに衝撃を受け、その場で真吟精米が可能な精米機の購入を決断したという。「僕ら造り手は、飲んだあとのキレをチェックするんですが、中盤からの後味のキレの差が全く違いました。扁平精米のお酒は飲んだあとにきれいに消えるんじゃなくて、本当に消える」と声を大にする。現在、同蔵では、精米歩合60~50%の商品で真吟精米を採用している。「扁平精米した米で仕込むようになって、圧倒的に美味しくなりました。もちろん、同じ割合(精米歩合)だけ米を削る場合は、球形精米より扁平精米のほうが精米時間がかかるので、コスト面はいろいろありますけど、でもそれをも凌駕するぐらい、酒質が変わりましたね」(新澤氏)。
※アミノ酸度の低い酒はすっきりとした味わいになりやすく、アミノ酸度の高い酒は芳醇でふくよかな味わいになりやすい。

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商品ラインアップ(一部)

【究極の1杯を求めて】
 固定概念に捉われず、絶えず新しいことに挑戦している新澤氏。今後の展望について尋ねると、すでに5年先の設備投資の計画が決まっているという。「僕たちは常に挑戦したいことで溢れています。だから、まずはどれから取り組もうかなって、そんなことばかり考えていますね。それと、うちは現状維持ってことはまずなくて。1年間で上層部は改善点を300件、部下たちは5Sを絡めて500件ほど案を出して改善します。つまり、年間800件ぐらい社内のルールが変わるんですよ。だから、1年経ったら別会社ですよね(笑)。僕ひとりだと800件も改善できないですから、やっぱりチームで動くということが大切ですし、ここがうちの強みですね。そのためにも、従業員たちには、自分で考えて決断する力を身につけてほしいです。ルールなんてあってないようなものですし、ルールを守れば正しいかというとそうじゃない。『私が正しいのに世の中の人はなんで分かってくれないの』ってならないためにも、とにかく経験や自分で選択できる環境を与えたいと思っています」と語る新澤氏の従業員を思いやる経営者としての愛情を感じた。

 当たり前を疑い、納得できるクオリティに達するまで妥協を許さず、自分の信念を貫き、道なき道を切り開いてきた新澤氏。「米」「水」「酵母」の力を最大限に引き出して「究極の一杯」を突き詰める。そんな哲学のもと生まれた新澤醸造店の「究極の食中酒」は、飲んだ瞬間の美味しさはもちろん、飲む人の心や人生までをも豊かにする。生き物を相手に、ひとつとして同じ条件はないなかで、狙った味を引き出せるのは、「最高峰のお酒を届けたい」と、日夜、努力を積み重ねた賜物である。「今の積み重ねが未来へとつながる。だから、変わり続けることが大切です」と熱く語る新澤氏の姿に、新澤醸造店の志と矜持を見ることができた。

【新澤醸造店の概要】
1.会社名:株式会社新澤醸造店
2.代表者:代表取締役 新澤 巖夫
3.所在地:宮城県大崎市三本木北町63
4.創 業:1873年
5.事業内容:日本酒の醸造および販売

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以上

(本リリースへのお問い合わせ: TEL 082-420-8501 広報部)
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