2024.06.03
当社の広島本社クリスタルビルのエントランスには、創業者佐竹利市と二代目利彦を象った二体の胸像が設置されています。入口の左右に鎮座しているので、あたかも神社の狛犬のようです(失礼!)。きっと、邪気を払い後進たちを守護してくれているのでしょう。
さて、この二体。利市像は利彦自作であります。利彦は本業の精米機開発はもとより、絵画・書・彫刻、そしてヤシ・ソテツの研究まで、まさに天才・異才と呼べるスーパーマンでした。利市像の躍動感と真に迫った表情は利彦の才能と心眼によるもので、見る人を引き込む力を持っています。
では、利彦像は誰の手によるものか。当然ながら自らの手で死後に製作することはできません。当然、第三者に製作を依頼したのですが、その製作には「立体写真像製作」という手法が使われました。聞きなれない言葉ですが、胸像や全身像、レリーフなどの製作に使われます。対象者の顔を複数の方向から同時に撮影し、その顔を幾多の縦線と点に分解して記録。それを特殊な方法で粘土に当て顔の原型を作るというもので、対象者の顔を忠実に再現できるという利点があります。今で言う3D撮影の走りと言えるでしょう。この手法が考案された初期には、かの大蔵大臣高橋是清像に使用されたほど画期的なものでした。利彦像はその手法により製作された作品の一つということになります。
利市像は芸術的・直感的に、利彦像は精緻・論理的に製作された思いがします。つまり「感性」と「理性」が併存した空間が存在していることになります。感性・直感的に精米機を開発した利市、理論・原理を重視した利彦。まさに胸像には当人が乗り移っている・・・と言えばお二人に怒られるでしょうか。二人の胸像は、「良い製品を開発しろよ」と今も従業員に語りかけている気がします。
佐竹利市像 | 佐竹利彦像 |